Last updated: Sun, 11/06/2005 13:02 GMT

このページは,私が読んだ本を散文調で批評するメモ書きです. 旅行関係が多いですが,気が向くとビジネス書などもあります.

特にヨーロッパを旅行するようになってからは,ある程度知識を持って行かないと良く理解できないことを痛感して,読むようになりました.

ほめるばかりでなく,つまらないと感じたら,つまらなかったなりにその旨 載せてあります.

これを読んで,「これも面白いよ」などと紹介してくれる方が現れればいいな,などとと期待しています. > 掲示板 / > mail


旅行 > 南アメリカ > ペルー

死のクレバス―アンデス氷壁の遭難
J. シンプソン / ¥1050

二人の登山家がもろい雪山に苦労しながら登頂,そしてベースキャンプに帰還する途中,滑落,そして片足を骨折.この時点での足の骨折の意味を十分理解している二人の間に沈黙が流れる.置き去りにされても文句は言えない.葛藤.しかし,パートナーのサイモンの協力で必死の脱出行を試みる.更なる滑落,そして,最終的にサイモンがザイル切断を決意.ザイル切断は,究極の決断だ.たとえその判断が正しかったとしても,切断したものは一生そのことに苦悶し続けるのだ.死の淵にある筆者と,サイモンが交互に自らの心情を素直につづっていく.片足で這いながら必死で帰還を目指す筆者.ベースキャンプに帰り着き,筆者の遺品を燃やすサイモン.全体を通して,お互いに交わす言葉は少ないが,尊敬し信頼しあっていることが良くわかる.プロの作家による美談仕立てではなく,当事者に寄る迫真の描写がすばらしい.(2005/03).おすすめ

 


旅行 > ヨーロッパ > 宗教

世界の宗教と戦争講座
井沢元彦/ ¥620

世界のユダヤ教、キリスト教、イスラム教、仏教、神道、儒教について,網羅的に解説をしてくれる.内容もそこそこおもしろいので,最後まで読破できるだろう.宗教を,漠然としか把握していない人が,世界の紛争がどうして起こっているのか,という点を理解するには良い本だ.しかし,筆者は記者らしくなく,裏付けを取ろうと思えばとれることを取らずに主観で書いたり,参考文献をきちんと明記しないのは良くない.なので,是非読んで欲しい本だが,評価は1ランク下げる(2005/11).まあまあ.

 

知って役立つキリスト教大研究
八木谷 涼子 / ¥870

ヨーロッパで旅行に行くと,どうしても教会巡りになる.一番良い場所に置かれ,一番金をかけて作られているからだ.しかし,3つ,4つ,と都市を回るにつれ,だんだんすべてが同じに見えてくる.「教会はもういいよ」と思うだろう.また,ヨーロッパで生活をしていると,どうしてもキリスト教は避けて通れない.この本は,その細かい点について丁寧に解説してくれる.翻訳者が,キリスト教の解釈について困ったときに開く本で,読み物としては,全くおもしろくない.疑問に対して,リファレンスとして使うと良いだろう(2005/11).まあまあ.

 

 


旅行 > ヨーロッパ > イギリス

遥かなるケンブリッジ―一数学者のイギリス
藤原 正彦 / ¥460

数学者である筆者が,研究のため,家族とともに1年間ケンブリッジにいったときのエッセイ.数学者という,抽象的な世界を一人で構築していく孤高な職業をしながら,人間的に家族と,そして同僚と向き合う様子をつづる.ケンブリッジというイギリスでも随一の研究者と向き合いながら,教育者としてケンブリッジの学生とも向き合う.家族が苦しみながら赴任生活を送る苦しみを隠すことなくさらけ出す.同じ筆者の,「若き数学者のアメリカ」もおすすめ(2004/10).おすすめ

 

イギリス式人生
黒岩 徹 / 岩波新書 / ¥777

赴任にあたっていくつも読んだイギリス本の中で,実はこの本が一番良かった.岩波新書とあって装丁も味気なく,中も字ばかりの本なのだが,ロンドン特派員らしくきちんと取材をして(当たり前か) じっくり余裕を持って書かれている.内容もB&Q(イギリスのDIYショップ) の話から,首相官邸の猫の話 まであり,面白い.おすすめ.

イギリスはおいしい
林 望 / ¥489

イギリスに行くとなれば,必ず紹介されるといっても良いリンボウ先生のエッセイ集.実は中を読んでも「イギリス料理がおいしい」とはどこにも書いていないところがみそ.実際にこれを読み,住んでみた感想としては,70%ぐらい同意できる,といったところか.内容はそこそこ面白いので, イギリスに向かう機内で読むのにちょうど良いと思う.おすすめ度: まあまあ

 


旅行 > ヨーロッパ > イタリア

ダ・ヴィンチ・コードにつられてこちらも購入.読み始めてすぐ,マッハ15で飛ぶ飛行機が出てきていやになったが,その後は面白かった.サイエンスフィクションとして作るにしては世界観が不足しているので,ダ・ヴィンチ・コードのように美術と宗教に集中して世界を作ったほうが良かったと思う.ローマの街を実際に訪れていると,この物語に対してより没入できるだろう.実際に,もう一度ローマを訪れて,道しるべの存在を確認してみたくなった.これを読んで,思わず1ドル紙幣を探してきてしげしげと眺めた人も多いだろう.私もその一人だ.おすすめ度: まあまあ.

 

ローマ人の物語1〜
塩野七生 / 新潮文庫 / ¥420〜

いわずと知れたベストセラーシリーズ,ローマ人の物語.重さと値段で文庫版を買っている.この本を読むまでは,歴史本を読むのが苦痛だったが,これを読んで考え方が変わった.最近は逆につまらない歴史本に腹が立つ.著者があきらかにローマびいきなのと,常にローマ人の視点で描かれているので,歴史書としては公正さに欠ける.しかし,戦闘時の記述の面白さは群を抜いているし,登場人物の思考が生き生きと描かれており,一気に読める.ローマ帝国は,イタリアのみならず,周辺のヨーロッパに影響を与えており,ベースの知識として読むべき.おすすめ.


旅行 > ヨーロッパ > ギリシャ

ロードス島攻防記
塩野七生 / 新潮文庫 / ¥420

聖ヨハネ騎士団とトルコのスルタンの戦いについて書かれた本.実際にこれを読み,ロードス島に行くと,この本が綿密な調査に基づいて書かれたものであるのがわかる.大砲が導入された中世の城壁が一体どういうものであるのか,という話題について触れられているが,それは現在でも変わらず残っており,それを実際に見ながら城壁の上を散歩していくと,より楽しめると思う.やはり塩野七生は戦記物に優れている.おすすめ度: まあまあ


旅行 > ヨーロッパ > オーストリア

現在の所,「ハプスブルク家」に関して良い本にめぐり合えていない.誰か教えてください.

ハプスブルク家
講談社現代新書 / 江村 洋 / ¥756

「キリスト教が心なら,ハプスブルク家は背骨である」.表紙に書かれたこの言葉に引かれて買った.内容はハプスブルク家について網羅的に興亡を書かれており,ある程度エピソードも交えたつくりになっている.しかし,文章の格調を高めたいのか,たいした内容がないところでも不必要に難しい言い回しをしきりに使い,とても読みにくい.その点は読んでいて腹が立った.Amazonでの評価が高いだけに,これは私だけの話かもしれないが.イマイチ.


旅行 > ヨーロッパ > フランス

このあまりに有名なフィクションは,どこまで本当?どこからフィクション?と解説書にまで手を出したくなるほど良く練られていて,物語としても面白いし,薀蓄に満ちている.気になる情報が満載で,これを手に,パリ,ミラノ,そしてイギリス,旅行に出かけて実際に見てみたくなってしまう.関係ないけど,前作天使と悪魔のヴィットリアとの関係は,どうなっちゃったの?おすすめ.


旅行 > ヨーロッパ > トルコ

コンスタンチノープルの陥落
塩野七海 /¥460
コンスタンティノープルの陥落

キリスト教国家がイスラム国家に陥落する様を,キリスト教国家の視点で描く.どうしても読むと,キリスト教側を応援してしまうので,結果がわかっているだけにいやなテーマである.しかし,読み終えても決していやな気分にはさせられない.そのあたりが塩野七海の力量なのだろう.イスタンブールを訪れる予定のある人は,ぜひ読むべきだ.トルコの長い歴史の中で,ビザンチン帝国が滅び,オスマン朝がおこることのみに焦点をおいた作品だが,この変化点を今でもイスタンブールに見ることができる.この歴史の転換こそが,この街の魅力だ.陥落後,教会からモスクへと作りかえられたアヤ・ソフィアへ行き,コンスタンチノープルを陥落させたスルタン・マホメット2世のトプカピ宮殿でお茶を飲み,激戦の舞台となったボスポラス海峡をクルーズすると,その当時のことを考えずにはいられない.おすすめ.

 


旅行 > アフリカ > エジプト

エジプトの歴史について,明快な語り口で年代順に講義をしていくという作り.人気教授らしくエピソードをたくさん交えて書かれている.古代の歴史だけあり,意見が分かれている場合は分かれているときちんと書かれている.吉村作治自身の自説については長めに書かれているが,学者らしく中立な視点を保つように気を使っている.上下に別れていて少し長いが,エジプト旅行中に読みきれるほどの分量.おすすめ.

ピラミッド文明・ナイルの旅 NHKライブラリー
吉村 作治 / ¥872

上記の講義録はわりと集大成のような完成度であるのに対し,こちらはそれほど深く掘り下げられていない.しかし,講義録が年代順であることに対し,こちらは場所別になっているので,自分の行くところに対して成り立ちを確認することができる.おすすめ度: まあまあ

ヒエログリフを書こう!
フィリップ アーダ / ¥1,575

エジプトに旅行に行く人なら誰しも,壁面に書かれたヒエログリフ文字が気になるに違いない.しかし,たいていガイドブックに書かれているのは,「フランスのシャンポリオンが,ロゼッタストーンを解析することで解読することに成功した」などと述べられている程度に過ぎず,その例としても,せいぜいカルトゥーシュという記号で囲まれた王名表が載っている程度だ.しかし,これは,そのヒエログリフがどういう文法で成り立っているかについて解説している野心的な本だ.しかし,これを使っても読めるのはせいぜい数字程度だし,ヒエログリフの文法について知っても人生の中では全く役に立たないと思われる.しかし,この本は純粋な知的好奇心をある程度満たしてくれる.カラー刷りのきれいな本なので,ぱらぱらとめくって「ふーん」とやる本なのだ.おすすめ.


旅行 > 中東 > イスラエル

パレスチナ新版
広河 隆一 / 岩波新書 / ¥819

新聞や雑誌などを漫然と読んでいても良くわからなかったパレスチナ問題を知るのに良い本.

特に,西側から見たパレスチナ感ではなく,筆者がパレスチナで実際に経験し,見聞きした内容が良く書かれている.なぜこの問題が泥沼化しているのかも,ある程度理解できる. おすすめ.

 


旅行 > アジア > インド

深い河(ディープ・リバー)
遠藤周作 / ¥620

インドに関する本は数多く出ているが,この本はタイトルどおり,とてもディープな話だ.これを読むと,きっとバナーラスに行って,ガンジス川に使ってみたくなる.おすすめ.